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2005年10月14日 (金)

エンド・オブ・タイム End Of Time

この前の連休のお目当てのひとつは「杉本博司 時間の終わり」にありました。
杉本博司について一言で説明するのはとても難しいのですが、写真を手段として現代美術を追究している人とでも言えばいいのでしょうか(このページにプロフィールが掲載されています)。

これがちょっと豪華なプログラムです。
この中の作品を拾いながらひとこと。

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まず驚いたのはそのコンセプトです。
これは "ジオラマ" というシリーズからです。
博物館に行くと、古代の人の生活を再現したような人形がよく展示されていますよね。
私はどちらかというとそういった展示の前を、ふーん、といった感じで素通りしてしまうことが多いのですけど、その理由の1つはリアルに再現しようとすればするほど嘘くささがどうしても消えないことにあります。
これらの作品群は博物館の "ジオラマ" をレンズの中に納めてしまっているのです(納めているだけなのです)。
杉本の言葉を引用すると

 ジオラマ
1974年、ニューヨークに着いたばかりの私は、ニューヨーク見学を始めた。自然史博物館にたどり着いたとき、私はひとつの奇妙な発見をした。剥製の動物たちが書割の前に置かれて、いかにも作り物に見える。しかしそれを片目を閉じてみた瞬間、遠近感が消失して急に本物のように見えたのだ。わたしは、カメラのように世界を眺める方法を発見した。どんな虚像でも、一度写真に撮ってしまえば、実像になるのだ。

実際の作品はとても大きく迫力があり、言われなければ "リアル" なモノと信じてしまうほどです。
"リアル" なモノに近づけようと努力したジオラマそのものは嘘くさく見えて、レンズを通してみたジオラマは "リアル" なモノに見えてしまう。
つまり、実物(のジオラマ)に "リアル" は無く、写真という虚像の中に "リアル" が存在すると言うことになります。

そしてジオラマ自体が実際には誰も見たことのない風景を再現したモノです。
しかし私たちは杉本の作品の中に "リアル" を感じます。

それでは私たちが杉本の作品の前で感じる "リアル" 感はいったい何なのか。

"本物"  と "模倣" の違いは何であるのか。

そもそも "本物" というのは何であるのか。

美術館にいる間、いろいろなことがあたまの中を駆けめぐってとても混乱してしまいました。物事の遠近感がなくなるというのか、とても奇妙な感じです。居心地が悪いのです。

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こちらは「蝋人形のポートレート」です。悪趣味と言えば悪趣味です。
ですがこちらも奇妙な "リアル" 感で私たちに迫ってきます。
何という居心地の悪さでしょう。
ここでは生命さえも "リアル" の根拠になり得ないことが判ってしまいます。

 肖像写真

16世紀、フランドル派の画家ホルバインは、王室付き宮廷画家として、威風堂々たる絶対君主ヘンリー8世の肖像画を描いた。その絵は今でもロンドンの国立肖像画美術館に保管されている。秀逸なる技術を誇るマダム・タッソーの蝋人形師たちは、ホルバインの原画をもとに限りなく忠実にその威容を再現した。そして私は、ホルバインが王を描写していたときのルネッサンスの光を研究した。こうして絵という唯一の記録方法によって伝わった王の面影が、写真という代替記録方法によって再現された。もしこの写真に写された人物が、あなたに生きて見えるとしたら、あなたは生きているということの意味を、もう一度、問い質さなければならない。

あと「海景」、「建築」、「仏の海」についてもひとこと書きたいのですが、今日はとりあえずここまで。

追記:"リアル"  "リアル" と書いていたら「真夜中の弥次さん喜多さん」を思い出しました。また見たいな。あれも問題作ですよね。

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コメント

TBありがとうございました。

カタログ買われたのですね。。。
私はお小遣いと相談して断念。
ブルータスで我慢です。

投稿: Tak | 2005年10月16日 (日) 13時08分

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