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2007年2月20日 (火)

リッスン Listen

「ドリームガールズ」のサントラを聴いていろいろなことを考え込んでしまいました。

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まず一聴して思うのは、”なんか熱くない”。
1曲目は「Move」。映画のあの迫力を期待して聴くと「あれっ?」。”汗”の部分をきれいに拭きとったみたいな感じなんですよね。音源は映画と同じはずだから、あのライブ感は映像と効果音(歓声など)をミックスしたものだったんですね。
映画の中のジェニファー・ハドソンはドスがきいてて、とにかくソウルフルな印象を持っていたのですが、CDで聴くと思ったより軽い(でもぽっと出の彼女がビヨンセ様を従えて歌う様は、ちょっとありえない設定だな、実際は)。映画での迫力が嘘のようです。

映画の中のエディー・マーフィーはすごく歌えてかっこよかったんですが、CDで聴くと声に”艶”が無いのがはっきり判ってしまうのもつらいところです。パフォーマンスは素晴らしかったけどね。

このサントラの中の楽曲はステージ用の曲が案外つまらなくて、舞台裏での出演者の感情(セリフ)を歌で表現したところ、いわゆるミュージカル的なところの方がだんぜんかっこいいのはこの映画のかくれた”キモ”ですね。
というのもこの物語自体、「黒人音楽が白人音楽で薄められて全米での成功を勝ち取る」という皮肉な見方も出来ますから。特にタイトル曲の「Dreamgirls」は「We Are The World」にも劣らない凡庸さですし。「わざとつまんなく作ったのか?」というのは映画を観ているときにも感じてしまいました。

(あと余談ですけど、歌い手の個性をあまり必要としない「ディスコ」へとシーンが移り変わっていくところは、どれも似たように聴こえてしまう現在のヒップホップを反映しているようにも思えてしまいました)

私、昨年のベストアルバムにビヨンセ様の「B'Day」を挙げたのですけど、これは大変なアバンギャルド作なんです。いわゆるR&Bの文脈とはかけ離れた作品で私の中では昨年最大の問題作でした。

Dreamgirlsの撮影終了後に「B'Day」の制作は始まったようです。この「B'Day」の中の最大の疑問は「ビヨンセ様はなぜ”こんな作品”を作ってしまったのか?」です。言い換えると「なにがビヨンセ様を”鰐スキー”にまで駆り立ててしまったのか?」です。

「B'Day」の最後にはシークレットトラックとしてこの映画のハイライトでもあった「Listen」が挿入されています。この切々と歌い上げる曲でアルバムが終われば実にキレイで余韻のある終わり方なのですが、その後、唐突に「Get Me Bodied」の別バージョン(オリジナルより100倍すごい)が延々と続くのです。この「Get Me Bodied」は私がこのアルバムで一番好きな曲なんですが、感情の入る余地すら無いような完璧なコーラスワークに酔ってしまいそうになります(ちなみにヘッドフォンで聴くとアタマくらくらします)。それは破壊的とも言えます。

では「なにがビヨンセ様を”鰐スキー”にまで駆り立ててしまったのか?」
それはビヨンセ様が「Dreamgirls」という映画に腹を立てていたから、しかないでしょう。作品を気に入っていないからと言ってもいいかもしれません。
映画作品としては優れているのは多くが認めるところであり、実際たくさんノミネートされています。しかし世間の評価とビヨンセ様の評価おそらく同じではないんでしょうね。それが「自分があんまりちやほやされない」からなのか、「つまらない楽曲を歌わせられた」からなのか、「”美人であるから”リードボーカルに選ばれたディーナと、才能も実力もある自分が同一視されること」からなのかはわかりませんが、「Dreamgirls」という映画に関わったフラストレーションが「B'Day」制作の動機のひとつであることは間違いないでしょう。”インスパイア”されたというよりは”アンチ”になるアルバムということでいえば全く似ていない二卵性双生児の関係かもしれません。

映画のプログラムにビヨンセ様のインタビューが載っています。

Q:「ドリームガールズ」に出演したことが、ミュージシャンとしてのあなたに、何か変化を与えたと思いますか?

A:ええ、とても大きなインパクトがあったわ。この映画を終了したら、私は休暇を取るつもりでいたんだけど、結局は休んでいることなんてできなくて、すぐアルバム「B'Day」の制作に取りかかったのよ。言いたいことが、あまりにたくさんあったの。ディーナは、いわば檻に閉じ込められていたから、私は自分のアルバムを使って彼女を解放してあげたかった。それで挑戦的な歌詞や、激しいビートの歌を書いたのよ。おかげでこのアルバムは、これまでとはまったく似ても似つかないアルバムになった。役を通じて、自分とは違う人生を経験できたのは、有益だったわ。「ドリームガールズ」に出演したことで、私は普段なら考えつくことができなかったようなことを考えることができ、興味深いアルバムを生み出すことができたのよ。
(下線は私)

公式インタビューですから際どいことは言えないでしょうが、映画に参加したことで「大きなインパクト」があり、「言いたいこと」が蓄積してディーナに対してフラストレーションが貯まっていったことがわかります。

映画「Dreamsgirls」を生むためのストレスから「B'Day」が制作されたとすると本人はどういう気持ちなんでしょう。複雑かもね。

そうは言っても映画そのものが素晴らしかったのは間違いないです。もう1回観たいなぁ。

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