「恋愛睡眠のすすめ」を鑑賞しました。監督はミッシェル・ゴンドリーです。ビョークのPVの監督だとかの説明はいまさら不要ですよね。前作の「エターナル・サンシャイン」も最高だったですし。
それで今回の作品ですけど、よかったですよー。かわいいモノ好きにはたまらん映画ですわ。夢の中のシーンがたくさんあるんですが、そのセットがとてもチープ。人形を一コマずつ動かすアニメーションの手法を使われていていちいちかわいいわけです(段ボールでできていたクルマ欲しいな)。
この映画のストーリーは、自分の父親の死をきっかけに別れていた母の住むフランスへ帰ってきた男の子(ガエル・ガルシア・ベルナル、「バベル」に出ていましたね)のお話しです。フランス語はうまく話せないし、母親が探してくれていた仕事も自分の思っていたものとはちがっていて、なかなか周囲と溶け込めない男の子。アパートのお隣にシャルロット・ゲンズブールが扮する女の子が引っ越してきて彼女に恋をしてしまうのです。男の子はさえないのですが、うまくいかないのかというと案外そうでもないのです。ところがこの男の子は眠っちゃうと妙な夢を見てしまうので現実か夢か境目がはっきり判らなくなってしまって、うまくいきそうなのに自分でぶち壊してしまったりするのです。
男の子の一連の変な行動(や夢)を見ていると「母親の存在感の薄さ」を感じてしまいます。まず母親の出演シーンが少ないし、出演したと思ったら母親が自分の知らないオトコをボーイフレンドにしていて、それを鬱陶しく思ったりする場面なのです。もうひとつ象徴的なシーンがありました。フランスへ久しぶりに帰ってきたら、もともと自分が使っていた部屋はもとのままにしていてくれたのに、ベッドは小さいままで、窮屈で寝心地が悪い、というオープニングでした。つまり、成長した自分、等身大の自分を見てくれる母親ではなかったということが如実に表れています。
その欲求不満が女の子への行動に現れてしまっているようでした。女の子の部屋に忍び込んで何かエッチなことでもするのかと思えば、彼女が大事にしているぬいぐるみの馬を動くように細工したりします。その忍び込んでいるところを女の子に見つかってしまって気まずくなりますが、理由が分かると女の子はあっさりと許してしまいます。
女の子に向かって一緒にオブジェ(それも変な)を創ろう、と提案すると意外にもあっさりOKだったりもします。
つまり女の子は男の子のなかでは母親の不在を埋めてくれる役割のようです。それは最後のシーンに象徴的でもあります。
女の子が自分を愛してくれないと(一方的に)勘違いしてしまって、メキシコに帰ると言い出すのですが、さすがに女の子も怒ってしまってけんかになってしまいます。「いったいどうして欲しいの?」と問い詰められた男の子は「頭をなでて欲しい」と答えて、けんかの途中なのに眠ってしまいます。そして頭をなでられながら美しい夢を見る(この夢は「自分的に」最高に美しいシーンでした。ホントとっても良いのです。かなりじーんとしました)ところで映画は終わります。
そして、この映画に強く惹かれる私も実は誰かに甘えたがっているのかな、なんてことも考えてしまいました。
前作の「エターナル・サンシャイン」の方が映画としては「ちゃんとしてる」かもしれませんが、何回も見たくなるのはこっちかなー。
この映画のプログラムです。上の方で赤い糸で綴じてあってレポート用紙みたいになってます。カワイイつくりです。
男の子が「70歳になったら結婚してくれる?」と電話口ですねて尋ねるシーンもあったな。かわいかったな。
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